かがわ・山なみ芸術祭2018 AYAGAWA
作家紹介
- 工藤 政秀KUDO Masahide
- 記憶の森
- 2011.3.11の大災害、その年の沖縄・渡嘉敷島での体験・制作、更に実父や義父母の死等から2011年から身体の一部分等の形が画面に現れる。ここ数年は特に顔や衣服等を描くことが多い。一昨夏、モロッコの大西洋に面した小さな村に滞在し制作した。私のレジデンス用のスタジオは海に一番近い場所。制作の合間には海を眺め、北アフリカの白いひかりのなかで、持参した小ぶりの詩集を読んだ。有働薫氏「モーツファルトカレンダー」そこに、とても気になる言葉があった。自分が絵について考えていることと重なった。その中の言葉を少し引用させてもらい綴ってみた。心、いや意識の奥深くに芯のようなものがあるとすれば、水晶針のような尖りで刺し貫くような絵画。定まらない生のように、繰り返し定まらない線を引き重ねる。曖昧さの集積が果てしれぬ浮遊感となる。定まらないもどかしは美というよりイメージが深く内面化して、浮かび上がってくる。その表情は美しさを超えた領域に入る。私はそんな絵を描きたい。「森」。展覧会や作品のタイトルに使うことが多い。私の上を通り過ぎる様々な出来事や経験。そして沈潜していく記憶。「森」とはそこに或る諸々の関係の限りなく豊かな総体。いずれにしても私にとって絵画は時間や記憶との対話でもあるようだ。その対話は外側との世界に繋がることを強く願う作業でもある。